CLASKA Gallery & Shop "DO" 湘南T-SITE店では、6月21日(水) から6月30日(金) までの10日間、「旅するカディ展」を開催します。
19世紀に誕生したインドの手紡ぎ手織り布・カディ。インドの人々に親しまれてきたカディの心地よさを「C.P.KOO(セーペルクー)」、「TERAI craftment(テライクラフトメント)」、「Tulla(トゥラ)」の3組がそれぞれのかたちにし、お届けします。
このフェアに先立ち、帽子ブランド・TERAI craftment のアトリエにお邪魔し、デザイナー 武市暁さんに帽子製作におけるあれこれや、『旅するカディ展』についてのお話を伺いました。
TERAI craftment のアトリエがあるのは、台東区にある「台東デザイナーズビレッジ」。ここは、かつて小学校の校舎として使われていた建物を活用し設立された、ファッションやアクセサリー、デザインの分野での起業を目指すクリエイターを支援する施設です。レトロな雰囲気の階段を上がり、タイル張りの手洗い場を横目に廊下を進んだ先に、TERAI craftment のアトリエは現れます。
高い天井と大きな窓のあるアトリエには、帽子製作には欠かせないミシンや道具がずらり。小気味のいいリズムでミシンが動く音がアトリエ内に響きます。
TERAI craftment のロゴマークにも使われている木製の道具は、「割台」と呼ばれる縫い代を割るためのもの。台の上に生地を置いてアイロンをかけることで、立体をきれいに出し、縫いやすくするための道具です。曲線用の丸いものや帽子のつば用の直線のものなど、パターンに合わせて差し替えができるように工夫されており、なんと武市さんのお手製!
帽子作りになくてはならないミシンは、すべて足踏み式。手元の作業を中断しなくてもよいように、おさえを上げるレバーも膝元に位置しています。
他にも、帽子のサイズを測るためのメジャーや西洋の甲冑のようなビジュアルの仕上げ用の型など、アトリエの中には見慣れない道具がそこかしこに並んでいます。
武市さんが帽子作りを始めたきっかけは、今から13年ほど前。美術の大学を卒業後、ものづくりの仕事がしたいと就職した会社は、アパレルブランドからオーダーを受けた帽子を製作する、いわゆるOEM製造を行う帽子メーカーでした。
職人として帽子製作を行う一方で、入社一年目から企画営業も任せられ、商品企画にも携わるようになります。様々なブランドのデザイナーと打ち合わせを重ね、デザイナーの思い描くイメージを共に形にしていくという経験を通して、「こんな帽子があったらいいのに」という想いを自分でも形にしてみたくなったと言います。
そして約2年半前、デザイナーズビレッジへの入居をきっかけに、自身のブランド「TERAI craftment」を立ち上げました。
「TERAI craftment」が目指しているのは、帽子好きだけでなく、そうでないひとにも被りたいと思わせる帽子。自分の作りたいものを作るのではなく、見た目と機能性のバランスがとれた、被るひとの気持ちに沿った帽子作りを大事にしているそう。被り心地にもこだわり、パターンを引く際は特に時間をかけ細かな修正を繰り返すと言います。
また、展示会でのいろいろな人との会話を、帽子作りのヒントにすることもしばしば。企画営業時代から心がけていた会話のキャッチボールを、今でも大切にしています。
TERAI craftment の代表作でもあるストレンジャーハットは、そんな会話からパターンに変更を加えたもののひとつ。これまでのストレンジャーハットは、背高で個性的に見えるという声を受け、新しく、高さを低くしたタイプも仲間に加え、好みのシルエットをお選びいただけるようになりました。
「旅するカディ展」では、小さく折り畳むことができ、旅先でもかさばらないストレンジャーハットのほか、新作のブレードハットも並びます。
ブレードとは、繊維を帯状に編み上げた紐のこと。これを、帽子のてっぺんからぐるぐると縫い合わせ、帽子の形状に仕立てたものがブレードハットと呼ばれます。
現在、日本国内ではブレードを作ることができる工場はごくわずかになってしまい、日本製を謳っているブレードハットも、ベースとなるブレードは海外製の既成のものが使われているケースがほとんどだとか。
そんな中、TERAI craftmentのブレードハットは、岡山の工場に武市さんが直接出向き、素材の選定から、色や編み方までをオリジナルでオーダーしたブレードを使用しています。素材の張り感や色など、ひとつひとつに武市さんのこだわりが詰まっています。
素材にこだわった心地よい服作りを行うブランド「C.P.KOO」と、カディの魅力を日本に発信するブランド「Tulla」との合同企画展は今年で2年目。
職人時代に作っていた帽子がメンズ中心だったために自然とメンズライクなシルエットが多くなっていたTERAI craftment の帽子に、レディースに向けた帽子が増えたのもこのコラボレーションがきっかけでした。また、テキスタイルや繊維にくわしい2組のデザイナーさんたちとものづくりを続けるうち、武市さんの中で素材に対する興味が増したと言います。
手紡ぎ手織りのカディは、インドでは日常に根付いたとても身近なもの。日本の工芸品のように特別扱いされることなく、職人の手仕事が受け入れられています。
日常に溶け込んだクラフトマンシップは、TERAI craftment の目指す帽子作りにも通じるもの。カディの魅力について語る武市さんの目を見て、TERAI craftment とカディとの出会いはきっと必然だったのだ、と思わずにはいられませんでした。
「旅するカディ展」では、ハットやキャップ、ヘアバンドなどカディの生地を使用したアイテムもバリエーション豊富にご紹介予定です。そのほか、武市さんの手仕事が詰まった、旅に連れ出したくなる帽子がたくさん並びます。
TERAI craftment をはじめ、カディにまつわるものづくりを様々な角度から見ることができる今回のフェア。ぜひこの機会にお手にとってご覧いただければと思います。皆さまのご来店をお待ちしております。
(写真・文:CLASKA Gallery & Shop "DO" 湘南T-SITE店 山本純子)
[会場]CLASKA Gallery & Shop "DO" 湘南T-SITE店(湘南T-SITE 2号館 1F)
[会期]2017年6月21日(水)~30日(金) 10:00~20:00