CLASKA Gallery & Shop "DO" 本店では、「BANKO archive design museum 展」を開催中です。
三重県四日市市にある BANKO アーカイブデザインミュージアムは、陶芸家・内田鋼一さんが自ら設立し館長を務める私設美術館。明治期より四日市市の地場産業として発展した萬古焼の中でも、とりわけ産業から生まれたデザイン性の高い萬古焼をアーカイブしたユニークな美術館です。
兼ねてから CLASKA Gallery & Shop "DO" ディレクターの大熊とご縁のあった内田さん。昨年末には BANKO archive design museum とドー、そして東屋がタッグを組み、萬古焼の歴史の中から魅力的な作品を復刻するプロジェクトの第一弾として「萬古鏡餅」を発表、販売開始しました。
ドーが10周年を迎えたこの春、四日市からその貴重なコレクションの一部をドー 本店にお持ちいただき、東京で初めてお披露目いただく運びとなりました。
会場に並んだのは、BANKO アーカイブデザインミュージアムの常設コレクションの一部に加え、これまで現地で開催された3つの企画展のアーカイブ展示。BANKO アーカイブデザインミュージアムのこれまでをぎゅっと凝縮しご紹介しています。
©BANKO archive design museum
明治期より三重県四日市市の地場産業として発展し、1979(昭和54)年には伝統工芸品の指定を受けた「四日市萬古焼」。「萬古焼」という名は、江戸時代中期に萬古焼を開窯した、豪商・沼波家の屋号に由来しています。「萬古不易 = いつの世までも栄える優れたやきもの」という意味が込められており、地名由来ではないのも特徴の一つです。
東海道沿線の宿場町だった四日市は、周りの瀬戸・美濃・常滑などの大きな窯場地と比べ良質な土が多くありませんでした。今では萬古焼を代表する、ろくろ引きの紫泥急須の生産が広まったのは明治中期の頃。白土が取れなくなった状態への打開策として開発されたものでした。こういった新技術の開発や、海外メーカーとの流通の開拓など、様々な創意工夫をすることで独自のオリジナリティを生み出し地場産業として繁栄していきました。
今回お持ちいただいた展示品の多くは、第二次世界大戦前後の昭和中期に作られた統制陶器や代用陶器。
国によって生産が統制されていた時代の統制陶器には、生産者や生産数がわかるよう、裏に「万」の印と統制番号が入っています。
良質な土が少なかった四日市では、国民に倹約を貯金を推奨するための貯金箱をはじめ、おろし金や洗面器から鎖まで、食器以外のものが多く作られました。
また、戦時中は金属やガラスなどの物資が不足し、ガスバーナーや尿瓶なども焼き物で代用されました。
鉄製のガスコンロや、ホーロー製のやかんなど、本来の姿を模して作られた陶器。決して明るくはない時代背景に想いを馳せつつも、その造形の見事さと実現するに必要であったであろう高い技術に感心し、つい見入ってしまいます。
こちらは輸出向けに作られたという陶製のキユーピー。コレクターがこれを一目見に四日市に訪れることもあるそう。
そのほかにも、かつて木型を用いて作られていた手捻り急須は、その急須とともに木型も展示しています。木型を使用するのは萬古焼独自の技法だったそう。その発想や繊細な構造、完成品の精度の高さは今の時代に見てもなお、いや今の時代に見るからこそ驚異的です。
BANKO アーカイブデザインミュージアムでは2015年にオープンして以来、常設の展示に加えこれまで3つの企画展を開催されています。企画展では、様々なデザインに焦点を当て、「形・form」「色・color」「素材・material」「人物・person」など、毎回ひとつのテーマに沿って、萬古焼に限らず世界中の古いものを集め展示されているとのこと。今回は特別に、それぞれの企画展で展示されたものを一部お持ちいただきました。
Vol.1「白いやきもの - こんなにあるんだ?器ではない日用品の陶磁器 - 」 ※2016年8月11日(木)~11月28日(月) に開催
Vol.2「琺瑯のいろ・かたち - COLOR + FORM of ENAMEL - 」 ※2017年5月25日(木)~9月25日(月) に開催
Vol.3「OPENER - 抜く道具とその周辺のもの - 」 ※2017年12月16日(日)~2018年3月12日(月) に開催
テーマに沿い、基本的には現行品ではなく古いものを、そして工芸品や作品としてではなく、工業製品として世に流通していたものをアーカイブし、再検証する。それぞれの企画展で集められたアイテムを見ると、用途と素材・デザインとの関連性、生産に要する知恵や高い技術、そしてその存在としての面白さや柔軟性という側面で、萬古焼とも通ずるものがあることがわかります。
これまでの企画展の図録も取り揃え販売していますので、じっくりご覧になれたい方はぜひこの機会にお求めください。こちらの図録は会期限定で CLASKA ONLINE SHOP でも販売しております。
以上、合計100点を超える展示品に加え、展示スペースの横では販売も行うミニショップのコーナーも設けました。「黄色」いモノを中心に内田さんが世界中から集めた古物、ミュージアムのオリジナルグッズなどをお買い求めいただけます。在庫限りとなりますので、どうぞお早めに。
会期初日には内田さんが今回の展示を記念して作ってくださった黄色い湯呑などの作品も僅かにご用意いただきました。(販売終了しました。)
また、4月22日(日) には内田さんのトークショーを開催します。各展示品の詳細や BANKO アーカイブデザインミュージアム設立の背景、ご自身の活動についてなど。こちらのブログではとてもご紹介しきれない色んなお話を、CLASKA Gallery & Shop "DO" ディレクターの大熊が聞き手となり伺う予定です。ご予約のうえ、ぜひお越しください。
*トークショーのご予約受付を終了しました。ご予約されていない方も、お立ち見でよろしければ当日ご参加いただけます。
産業とデザインという両面から、萬古焼のユニークな歴史と変遷に触れることのできる貴重なコレクションです。四日市に行かずとも東京でご覧になれるまたとない機会ですので、BANKO アーカイブデザインミュージアムが気になられていた方はもちろん、足を運んだことがあるという方も、これまで知らなかったという方も、どうぞお見逃しなく。
会期は5月6日(日) までです。ご来場をお待ちしております。
[会場]CLASKA Gallery & Shop "DO" 本店(CLASKA 2F)
[会期]2018年3月31日(土)~5月6日(日) 11:00~19:00
■トークショー
内田鋼一さんによるトークショーを開催します。
[日時]4月22日(日) 16:00~
[参加費]無料
[ご予約]CLASKA Gallery & Shop "DO" 本店店頭またはお電話で承ります。 Tel:03-3719-8124
*ご予約優先となります。満席の際にはお立ち見となりますので、ご了承ください。